《当工房の手染め製品について》

当工房では、主に牛のタンニンなめし、

及び牛ヌメの生成りの天然皮革にエンボス加工をし、

アルコール染料で手作業で染付けをし、製品を作っています。

天然皮の特徴として、細かい荒れ、トラ模様のしわ、

染めムラ等がある場合がありますこと、ご理解くださいませ。

明らかに製品の価値を損なう傷は避けていますので、ご安心ください。

また、お使いの端末によって商品と写真の色味が違って見える場合があります。

極力、調整後に掲載しておりますが、若干の相違が出ることを

あらかじめご了承ください。

以下に素材や染料について説明させていただきますので、
長文になりますがご一読いただければ幸いです。

素材について

●皮革●

革は主に、牛革を使用しています。一口に牛革といっても、なめし方で風合いはぜんぜん違ってきます。

当工房では手染めによる製品が多いので、染色、カービングに適した染色用の皮革『タンロー』、

または『ヌメ革』を使います。

タンローにもソフトなものと、ハードなものがあります。タンローの特徴として、
経年変化によって色が変わる、という性質があります。
たとえ染料で染めつけてあっても、素材の色の変化には影響されるので

使い込んでいくうちに、使う人の環境に沿った色の変化が楽しめます。

染色が必要ない製品には、カラーヌメ革、オイルレザー、グローリーレザー、クラックレザーを使います。

ヌメ革は、植物から抽出するタンニン(渋)を使い、長い時間をかけて鞣した、組織が詰まった丈夫な皮革です。
一般的には染色しない状態の生成りのものをヌメ革、と呼んでいますが染色したものもあります。

当工房では、生成りの物を仕入れて、型押し後染色、またはそのまま使います。

経年、紫外線、使う人の皮脂等の要因で、生成のベージュから、最終的には薄い茶色まで、
段階的に変色していくのがヌメ革の特徴です。これがいわゆる『味』になっていきます。
染色した場合も、薄い色の場合、下地の変色の影響を受けるので、この『味』は損なわれません。

オイルレザーは、タンニン鞣しの皮革に、文字通りオイルを浸透させた皮革です。
ヌメ皮よりも比較的ソフトにしっとりとしています。当工房では、オイル分がそれほど多くない、
『多脂革』と呼ばれるものを使っています。色数は数色あり、表面の処理がそれほどきつくされていないので、
使い込むほどに変化が現れ『味』が出てきます。

また、サッと付いた程度のこすり傷ならば、ミンクオイル等で磨けばほとんど目立たなくなる、
という特徴もあります。定期的にミンクオイル等を塗ってあげれば、ひび割れも起きにくく、長持ちします。

グローリーレザーは、クローム化合物で鞣した皮革で、ヌメ皮やオイルレザーよりも軽く、柔らかいけど

張りのある、小物からボストンバッグのような大きいものまで、オールマイティに使える革です。

色数も豊富で、表面処理がきつめにされているので、少々の水気や汚れには強い、扱いやすい革です。

反面、『味』が出にくい素材でもあります。

クラックレザーは、革の裏側(床)に、塗料で色をつけて、その塗料が割れることによって出来るヒビ(クラック)

をテクスチャーにした、ユニークな革です。 使っていくうちに塗料が徐々に剥がれていき、独特な『味』が出て

きます。 硬いものから柔らかいものまで、作るものによって、数種類を使い分けています。

●牛ベロア●

牛ベロアも当工房には欠かせない素材です。ベロアは、皮の表面層の下の部分、『床(とこ)』と

呼ばれている部分を柔らかく仕上げた、袋物や小物に最適な素材です。

当工房では、キップベロアと呼ばれる、子牛の皮から作られたベロアを使用しています。

色数も豊富で、ポップな作品が出来上がります。

●ピッグスエード●

ピッグスエードは豚のスエードです。 スエードとは、皮革の表面(銀面、または吟面といいます)と

直下の床面を残し、その他の部分を取り除いて起毛させた裏側部分を表面に使った、しっとりとした

手触りで、しなやかな質感の皮革です。 銀面を裏にして使うため、『バックスキン』などとも呼ばれます。

よくベロアと混同されがちですが、スエードは銀面があることと、表面がベロアよりも繊細で

きめ細やかな点で違います。

当工房では、やわらかく丈夫で、色数も豊富な豚のスエードを使っています。

主に、中身を傷などから保護する場合の商品(スマートフォンケース等)の裏地として使います。

イレギュラーな商品として、巾着などの袋物も作ります。

●合成皮革●

合成皮革は主に、裏地に使います。 薄くて強い、防水性のある生地を使っています。

●布地●

一部の製品に裏地として薄手の布地を使います。ほつれ止め加工がされています。

また、特別な注文などで、キャンバス地や民族衣装などに使われる荒い織物などと、

皮革を組み合わせて使う場合もあります。

キャンバス地は、トートバッグを作る場合にも使います。

●その他●

ベニヤ板、アクリル板、ビニール、色々な素材を、その時の状況に合わせて使い分けます。

染料等について

●染料●

染料は主に、アルコール染料を使用しています。 これは、鉱物から生成した粉末をメチルアルコールで

溶解した溶液です。 色によっては宝石の粉末(大変高価です)を使う場合もあります。

皮革全体の染色、型押しをした部分の細かい染め分け、仕上げの線出しまで、この染料でこなします。

色数が非常に多いのが特徴です。

もう一種類、ペースト状の染料も一部の製品で使います。 これは、靴墨の様なものと思ってもらえば

よいでしょう。 カービングや型押しをした部分にペーストが残るようにして、柄を表現します。

当工房では、黒、こげ茶、キャメル、ワインを使います。

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●仕上げ剤●

基本的に染料で染めたものには、色止め、保護艶出しとして、皮革用ラッカーをスプレーします。

以前は有機溶剤系の皮革用ラッカーを使用していましたが、現在は、環境にもやさしい水性の

皮革用ラッカーを使用しています。

この水性ラッカーは、ツヤの出かたが有機溶剤系よりも優れています。

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●コバ仕上げ剤●

皮革の切断面のことを『コバ』といいますが、その部分をきれいに処理するために、コバ仕上げ剤を

使います。 当工房で使っているものは、主に水溶性のアクリル系のものです。

これを塗ることによって、コバに耐性としっとりとした落ち着いたツヤを与えます。